ワイン評論家の舌

今晩は、あるプロフェッショネルのお話を。

アメリカ人のワイン評論家P氏は、当ホテルをわが家のように常宿にしていらして
だいたい年に4~5回、ガイドブック執筆のためのテイスティングで詰められます。
3日間くらい、朝食サロンを貸切にして立てこもり、朝から晩までティスティング。

中心メンバーとなるのは、恋人でもあるフランス人ソムリエE女史、同僚のH氏、
それに昼食を挟む時には、地元のワイン生産者(モレ村で父子で各々やっている
あのドメーヌね)が加わって7人ほどに、テーブルの上は「試飲グラスで満杯」。
お食事なんて、どこに置いたらいいのよぉ・・・。

ですが、たくさん試飲できるから良いかというと、彼らの仕事ぶりは「ストイック」。
この日を目指して、フランス各地の無名であろう生産者達から、次々と宅急便で
サンプルが届くのですが、その数は半端ではなく・・・3日分で200アイテムほど?
一口飲んで、評価に困ってしまうようなワインも、時には含まれている様子です。


さて、そんな大仕事を終えたP氏は、最後の晩はE女史とふたりきりで
ゆっくりと骨休めをされてから、また旅立たれます。今晩のディナーもそうでした。

厨房に余裕があったので、シェフは「今晩はフリースタイルでやりますと伝えて」。
今が旬の白アスパラガス、ポーチドエッグ(これが白身と黄身がなぜか別々で)、
パルメザンチーズ、砕いたカシューナッツ、バルサミコ酢を仕上げソースで掛けて。

P氏は、「う・・・む、サンセールかな」とおっしゃる。あいにく今は切らしておりまして。
彼女とゴニョゴニョと話した末、選ばれたのは「Côtes de Thongue」という南仏の
ヴァン・ド・ペイの2001年。これを仕入れた2002年頃はフルーティで大変おいしい
ワインでしたが、これは最後の売れ残りの1本。果たしてどう熟成していることやら?

「責任持ちませんよ~(笑)」という私の言葉を制して、抜栓、テイスティング。
アハハ!何だかアルザスのピノ・グリを思わせる味、かなりトロ~リした舌触りですね!
「これだけで飲めば、まぁ悪くないけどな。アスパラガスには、モレの赤を出してよ。」

あとでE女史が、どうしてモレ・サン・ドニの赤のほうが良いのかを教えてくださいました。
アスパラガスの苦味、パルメザンの苦味、カシューナッツの苦味、それをシェフは
ポーチドエッグの白身で中和させ、バルサミコ酢の甘みでカバーしようとしている・・・。
彼らは、ヴェジタル(青臭い)ワインを合わせたくて、サンセールが飲みたかったらしい。

サンセールが無いなら、赤ワインのタンニン・苦味と合わせるというのもひとつの手。
アスパラガス=白ワインと思い込んでいた私は、アタマをガツーンとやられた気分でした。
そうか、アルザス地方ではミュスカを合わせるけれど、ほんのりと苦味のある品種です。

1日の仕事を終え、真っ暗なブドウ畑の中をクルマを走らせて帰宅する途中、
「あぁ・・・あった!たぶんアレを勧めれば良かったんだ!」 いつも後になってもっと良い
アイデアが浮かぶ私、もう少しアタマの回転を早めないと、ダメダメですね~。



「Bourgogne Côtes d'Auxerre」 Blanc 2005年 Domaine G & J-H Goisot
シャブリの近くに位置する、St-Bris村にあるドメーヌ。この村ではブルゴーニュとしては
例外的にソーヴィニョン・ブランが植えられていて、彼らは村の生産者としては第一人者。
これはシャルドネで造られていますが、いわゆる「こっちのシャルドネ」とは違う味わい。
どうですかね?
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by casteltresgirard | 2009-03-24 22:10 | おすすめワイン
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